金澤亜希子ピアノミニリサイタル 無言歌

コロナ禍でコンサートに行くこともなかったのですが、
久しぶりに金澤亜希子さんの演奏を聴きました。

10月31日に行われました「金澤亜希子ピアノミニリサイタル 無言歌 ~ドイツリート作曲家のピアノ作品~」
のレポート、というか、ほぼ演奏家さんへの手紙みたいなものです。

小田急線「代々木八幡」駅近くのPachetartのサロンで、昼の部・夜の部それぞれ15名限定で行われたのですが、
Jackは会場に出かけることもなく、YouTubeでのライブ配信で視聴しました。

 

まずは「前菜」ですが、メンデルスゾーンの『無言歌 op.62-3 葬送行進曲』
解説として、同じくメンデルスゾーンの『結婚行進曲』と同じようなリズムの葬送バージョン・・・ということですが、
言うほど葬送っぽくないです。まだ「続き」がある・・・みたいな雰囲気なので、
『試練』みたいなタイトルの方が良いように感じました。

 

つづいて「魚料理」はシューベルトの『即興曲 op.142-4 ヘ短調
全2巻8曲のうちの、最初の曲と最後の曲が演奏されました。
まず一曲目。こちらの方が、葬送っぽくないでしょうか?
ヤコブの梯子でも降りて来そうなノリです。
アルペジオちっくになるところは、死者の生前の記憶が走馬灯のように流れている感じですね。
途中で曲の感じが暗くなりますが(その手前でミスった? 聴き間違いかな)、弾きっぷりも追い打ちをかけるようになります。
こういうところは金澤さんっぽいと思われます。
段々とおおらかになるのは、天国の門が近くなるからでしょうか。
そして音の量がガクんと減って、ペテロの前に立たされた感じで終わる。

もう一曲は最初の曲よりも「旋律」的です。
金澤さんっぽい」という解説がありましたが、
Jackの所感では、鍵盤の上を左右に手が走るタイプより、ガンガンと上からたたきながら、
顔芸なしで、弾き切る感じの方が「金澤さんっぽい」かな・・・

途中、途切れ途切れな感じになったり、速くなったり、再びなだらかになったりと
目まぐるしい感じが満載ですが、こういうところはシューベルトっぽいのかな?
「ロマン派です!」的な演出が施された曲作りと言いましょうか、
言いたいこといっぱいあります、でも表現しきれません、みたいな雰囲気が練り込まれた曲調。
そして、怒涛な感じで一気に終了。
全部言い切れないし、まとめるのも面倒だし、もう止めちゃえ、みたいなもんでしょうか。
とは言え、金澤さんシューベルトは聴きやすいです。

 

そして本日の肉料理はブラームスシューマンの主題による変奏曲』
シューベルトと同じ「ロマン派」に分類されるのだと思います。
曲全体を通して、放出、抑圧、激、緩と雰囲気は変わると思うのですが、シューベルトやリストに比べて「演出的」ではなく、
真に感情的で、ブラームスこそが「The ロマン派」のように思えます。
Jackの勝手な言いぐさとしては、恐らく、金澤さん向きの作曲家ではない・・・
「演出」感が溢れている方が合っているのではないかと想像します。
あくまでJackの感じ方なのですが、金澤さん自身が感情を出して弾くタイプではない・・・ので、
ブラームスの想定よりも、ずっと理性的な演奏になったのでは? と想像します。
配信による鑑賞ということもあると思いますが、音量の変化が感じにくく、
起伏のある演奏ではあるものの、単調に聴こえてしまいました。

 

今回はドイツリート作曲家が作ったピアノ曲で構成されたリサイタルということで、
サロンのピアノは、ドイツのメーカー:シュタイングレーバー&ゼーネ (Steingraeber & Söhne)だったようです。

YouTubeの配信は素晴らしく、聴衆の咳払いやちょっとした物音も聴き取れて臨場感満載。
1週間見放題・聴き放題ということで、
もう少し、金澤さんの悦に入ったフリをしている「顔芸」を楽しもうと思います。