八甲田山死の彷徨

学校の後輩N子さんと本屋にいる時のことでした。
新田次郎氏の本で、どれが面白いか?」という話題になり、Jackが
「やっぱり、『八甲田山死の彷徨』かな!」と言うと、N子さんは
「あっ!映画なら観たことがあります。それで一人で「八甲田山ごっこ」もやりました!」
とおっしゃるのです。
「なんですかい?その「八甲田山ごっこ」っていうのは?」と訊くと
「庭に雪が積もった時、「雪中行軍だぁ!」って言いながら、ズルズル、雪を踏み固めて歩くんです」
ということでした・・・
「すみません、雪国育ちなもんで・・・」と補足されていました。
N子さんは越後の方です。
無論雪国育ちの人すべてが、「八甲田山ごっこ」をするわけではないと思いますが。

Jackの手元にあるのは新潮文庫から昭和53年2月に出た三刷のものです。
有名な本なので「今さら」という感もありますが、内容は実話も元にしたフィクションです。

日露戦争の直前、陸軍第八師団の第四旅団に属する第31連隊と第5連隊に、
実質命令という形で、冬の八甲田山において雪中行軍の演習をするよう提案があった。
もちろんロシアとの戦争を控えての演習だった。
第31連隊の方は少数精鋭部隊でこれを成し遂げ、全員が生還した。
第5連隊の方は雪山に対する見識の甘さ、そして何より指揮系統の混乱から、
210名のうち、199名の死者を出してしまうという、対象的な結果となった。

これは映画化もされた作品で、かなり知名度も高く、
また明治35年に実際にあった事件をもとに執筆されたそうです。
何やら経営やリスク回避やらの参考に、企業でも使用される作品だと聞いたことがあります。

確かに十分な事前の情報収集の必要性、上司としての資質、指揮系統の統一性・・・等、
会社組織でも十分応用がきく要素がたくさんあると思います。

Jackとしては、軍隊というものの悪い意味での機密性、
軍隊という会社以上に強く階級を意識しなくてはいけない世界において、無能な上官をもった不幸、
明治期における「庶民の出」「士族の出」という偏見
軍人の一般庶民に対する不当な威圧、侮り・・・等、面白い要素が満載。
そして何より、雪山の怖さ!
もー、人が次々死んでいくんです・・・バッタ、バッタと。
雪に埋もれて立ったまま凍って死んでいく・・・みたいなですね、
自然の容赦なさが描かれているわけです。

新田次郎の山を扱った小説・・・ですが、それだけではない。
読後はかなり殺伐とした気持ちになるのですが、
映画鑑賞後は「八甲田山ごっこ」したくなるのかなぁ?
Jackは映画については、未観です。